スケートボードの本体であり、まさにその顔ともいえるデッキ。板の形状はさまざまですが、自分にフィットする乗り心地と同時に、個性が際立つグラフィックやデザインが選ぶ際の決め手となります。今回は、有名ブランドの中でも特に人気の高い老舗、「ステレオ」のデッキの特徴について紹介します。
ステレオのデッキの特徴って?
最初に、スケートボードにおけるデッキの概要を確認しながら、ステレオのデッキの特徴と魅力をひも解いていきましょう。
デッキについておさらい
デッキは、スケートボードの本体となる部分で、スケートボードを構成するパーツの中でも長さや幅など、最もバリエーションが豊富です。デッキには、コンケーブと呼ばれる湾曲した部分があり、この湾曲の度合いによってコントロール性やグリップ性に違いが出ます。
前後は、それぞれに角度のついたノーズキックとテールキックがあり、キックの強さ(角度)によってジャンプやトリックのしやすさに変化があるのが特徴です。デッキの素材は、プラスチック製もありますが一般的には木材が多く、ハードメープル(日本名ではサトウカエデ)という樹木が良質な材料として知られています。
光沢があり、構造が緻密。木目が美しく通っているのが特徴。重硬かつ衝撃に対する抵抗力が大きいため、スケートボードのデッキ素材としては最適です。デッキを作る際には、このハードメープルを薄いベニヤ板に加工し、7枚ほど重ねてプレス・成型します。
ハードメープルの主産地は、主にカナダやアメリカ北部ですが、近年は中国産も見られるようになりました。ただ、ハードメープルは低温の地域のほうがより高品質となるため、カナダ・アメリカ産のハードメープルを使ったデッキのほうがより丈夫で品質が良い傾向です。
バリエーションを広げやすいデッキには、世界中にたくさんのブランドがあり、独自に開発した技術によって強度や軽量化したデッキも提供されています。木製のデッキは、そのままでは乗せた足がすべってしまうため、安全なライディングができません。
そのため、足を乗せる上側には、紙やすりのようなデッキテープを貼って使用します。個性が強調されるスタイリッシュなグラフィックが描かれているのは、テープが貼られる上側ではなく、トラックやウィールが装着されるボトム側です。
ステレオブランドの魅力
米国カリフォルニアに本拠を置く老舗ブランドとして有名な「ステレオ」。その洗練された独特のグラフィックデザインは、都会派スケーターから絶大な支持を集め続けています。また、ブランドのチームには指折りのトップスケーターが所属し、世界各国のさまざまなイベントにおいてステレオの名が聞かれます。
近年話題となったのが、プラスチック製のカラフルな1970年代風のミニクルーザーの販売です。斬新な街乗り用として気軽に楽しめる小型スケートボードは、瞬く間に愛好者の層を広げ、ブームの立役者ともなりました。
バイナルクルーザー(Vinyl Cruiser)と呼ばれるこのミニクルーザーは、老舗ブランドとしての確かな技術が凝縮された自信作。長さ57cm幅15cmという超小型でありながら操作への反応が良くステアリングが容易で、上級者スケーターをもうならせる高性能ぶりです。
このように、ステレオは本格的なスケートボードから軽快なミニクルーザーまで、ボードを愛するスケーターたちを広く魅了するブランドといえるでしょう。
ステレオのデッキの特徴
ステレオのデッキは、カナダ産のハードメープルを材料に、7層プレスしたオーソドックスなスタイル。弾力性を持たせるプレス技術で仕上げられ、強度と適度なしなりが共存しています。コンケーブの湾曲、前後のキックのそり具合は、どちらもスケートボードの王道を感じさせてくれるでしょう。
プロスケーターたちが創業者というだけに、キックに頼らずに自分のすべりのスタイルを創り上げたい玄人好みといえるのかもしれません。デッキのサイズは一般的に7.5~8.25インチが主流で、体格やすべりのタイプによっても異なりますが、基本的には幅があるほど安定があり、細くて軽いほど回転系のトリックに適しています。
日本人が通常のすべりをする場合には、7.625〜8.0インチ程度が体格的にも妥当ラインとされます。しかしバーチカルなど急角度のランプでライディングを行うために、さらに安定感がある幅広のデッキを選択する人もいます。
ステレオのデッキは全世界的な展開で、愛好者の属性も多様多彩。日本で購入できるサイズも7.5~8.625インチクラスまで見つかります。トッププロに愛されてきた老舗ブランドのデッキの中から、自分にマッチするサイズと好みのデザインが探せるのは嬉しい点です。
ステレオの歴史
ステレオの創業者は、俳優兼プロスケーターであったジェイソン・リーとアーティストでスケーターのクリス・パストラスです。13歳でスケートボードを始めたジェイソン・リーは18歳からプロとして活躍、ブラインド(BLIND)のトップスケーターであった1992年に起業し、自身のブランドを立ち上げました。
主力商品はデッキですが、関連商品も多数提供しています。商品デザインはレトロモダンを基調とし、創立から時間を経た今でもクラッシックとオリジナリティを保ち続けています。さらに、ジェイソンとクリスは映像を通じ、スケートボードの魅力を伝えてきました。
1994年の「A Visual Sound」、1996年の「Tincan Folklore」といった2つの作品では、8mmフィルムを使い、白黒の静止画や前衛的な音楽などの手法でスケートボードの魅力を表現しています。ステレオブランドが提供した画期的な作品は、現在でもスケートボードコミュニティ界の古典として愛されています。
ステレオのライダーたち
多数のトップスケーターが所属してい流、ステレオのチーム。そのチームに所属する主なライダーたちを紹介します。
「ヨシ・タネンバウム」
イスラエル、エルサレム出身。9歳で米国メリーランド州シルバースプリングに移住後、スケートボードを始めています。2018年、ステレオと契約して正式にプロスケーターとなりました。フルスピードでのコントロール技術は抜群で、豪快なトリックを駆使する度胸満点のすべりが魅力的なスケーターとして知られています。
「カイル・リーパー」
米国カリフォルニア州エンシニータス出身。2011年からステレオに参加し、プラスチック製クルーザーのCMでは、ステップオフの妙技を披露しています。ロングスラロームの技術にも定評があり、テールを浮かせたまま横向きですべる、ノーズブラインドの記録に挑戦した映像が公開され、話題となりました。
「カール・シップマン」
英国ワークソップ出身。1990年代にプロスケーターとして活躍し、1994年のドイツのミュンスターコンテストでは、その技の高さで世界を驚かせました。すべりに衰えを見せることはなく、レジェンドとしてリスペクトされている存在。
ステレオの最初のビデオ「A Visual Sound」に出演し、素晴らしいパフォーマンスを披露しています。
「マット・ロドリゲス」
1992年に加入しました。黄金期への上昇に大きく貢献した伝説のスケーターです。また2005年12月には、トミー・ゲレロらカリスマ的スケーター5人でバンド、BLKTOP PROJECTを結成。オリジナリティあふれるサウンドで、スケートボード界のみならず世界中の音楽ファンから多くの支持集めています。
「クリント・ピーターソン」
米国ミネソタ州スティルウォーター出身。2003年新しく改革されたステレオに参加した、最初のライダーとなりました。そのすべりはカントリー風からシティ風まで、多彩な魅力に富み、創造性を感じさせる独自のライディングで見る人を魅了しています。
まとめ
自らが高いスキルを持ったプロスケーターが設立したブランド、ステレオ。デッキのフォルムやデザインには、そのこだわりの深さが明確に表れています。クラシカル&スタイリッシュなブランドイメージは、今も世界のスケーターの憧れです。ブランドチームには、プロやアマチュアで活躍する名スケーターが集い、ステレオの名を一層輝かせています。ミニクルーザーブームを巻き起こす新鮮な発想力からはまだまだ目が離せません。
多くのプロからも支持を集めるステレオのデッキ。ぜひ一度手にしてみてはいかがでしょうか。
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