「今年は雪に恵まれているけど、なんか滑りが悪いな」。ゲレンデでレストランに入るために板をスタンドにたてかけると、白っぽくカサカサになっていた板の裏。新品のときのツヤ感が失われていることに気づきます。そろそろワックスをかけなければと思っていても、どうやっていいものなのか、わかりづらいもの。手遅れになる前に、使用前と後のメンテナンス方法について、プロに聞いてきました。
ワックスの正解を求めて専門店へ
ヴィクトリア御茶ノ水本店(東京・千代田区)。プロスタッフのマンザーノ・シェラードさん(34)。スノーボード歴は約15年。お気に入りのスキー場は栃木県の丸沼高原。パーク、カービングがメインで、雪にあたればパウダーライドもおてのもの。信頼のできる一人。「ヴィクトリア本店は、ウインタースポーツショップが並ぶ御茶ノ水の中でも、有数のワックスの品ぞろえですよ」と出迎えてくれました。
ワックスをどうしてかける必要があるの?
Grab編集部:何回か滑っただけですが、すっかり板がカサカサになってしまいました。よくよく見ると、ほかの人の板も同じような状態で立て掛けてあるのをみるのですが、ワックスってそんなに面倒なものなのでしょうか。
マンザーノ:そもそも、新品の工場出荷時の状態でも、ワックスが入ってはいるのですが、あくまで保護のためのベースワックス。滑走性能を高めるためではありません。なので、板を買った時点で同時に購入するべきものです。板の寿命を伸ばすためにも、シーズン中だけでなく、シーズン終了後にきちんと塗ってから保管する必要があります。
Grab編集部:いかに自分がワックスについて知らなかったのか、よくわかりました。。。
マンザーノ:あとは、ひざらしで置いておくのは避けたほうがいいですね。よく昼を食べてから滑ろうとしたら、雪がゆるんで滑らなくなると感じる人もいるのですが、実は日に当たるのも滑走性能を落とす原因なのです。
劇的に滑走性能が違ってくる
Grab編集部:そもそも、ワックスって、なぜかける必要があるのでしょうか。
マンザーノ:板はワックスをかけないままでいると、滑走面に微細なケバだちが生まれて、滑りにくくなってしまいます。白っぽくなっているのはまさにそういう状態。なので、その凸凹を埋めるためにも、ワックスが必要なワケです。
スキーは滑るときに、雪が摩擦で溶けるので、その水はけをよくするために撥水性能が高いワックスが必要なわけです。よくシャバシャバ雪のときにストップするほど滑らなくなることがありますよね。あれば表面張力で板の表面と水分がくっついて排水できないからなんです。そこまではないですが、普通の雪でも同様なことがおきるわけで、ワックスに使われているフッ素やシリコンなどの撥水性が重要になってきます。
固形、スプレーいろいろ種類があるけれど
Grab編集部:ヴィクトリア本店は、ウインターショップが並ぶ御茶ノ水の中でも有数のワックスの品ぞろえを誇るとあって、いろいろな種類のワックスがありますね。スプレータイプや固形など、種類はさまざまなですが、何が違うのでしょうか。
マンザーノ:固形はゲレンドの温度帯によって細かく調整はできますが、ただ浸透させるにはワックスの熱でしみこませる必要があります。それからナイロンブラシに溝のワックスを書き出す必要があるのですが、これが部屋の中でやるとカスだらけになってしまうので、そこまでまだ滑りの違いにこだわりのない初心者なら、そこまでやる必要はないと思います。
スプレータイプが進化している!
Grab編集部:その点、スプレータイプのワックスは簡単そうですね。
マンザーノ:実は今売れているワックスの半分以上はスプレータイプです。従来よりも性能が上がり、撥水性能や持続時間などがかなり良くなっています。効果が落ちてもその場ですぐ塗れるのもスプレータイプの良さですね。最近では、缶の中にスポンジが入っていて、それを伸ばすだけのメンテマイスターも人気です。
Grab編集部:メンテマイスターだけでも、いろいろと種類がありますね。
マンザーノ:メンテマイスターには、雪質の適応性に優れたレギュラー(税別1,800円)と、滑走・耐久性に優れたハイグレード(同)、このハイグレードより全てでワンランク上の性能のプレミアム(税2,800円)があります。
Grab編集部:このメンテマイスターも、小さな缶なので、ポケットに入れておいてゲレンデでも簡単に使えそうですね。
マンザーノ:それでは実際に、やってみてお見せしましょう。
塗り方はいたって簡単
薄く伸ばす
マンザーノ:板はたてに溝が入っているので、スポンジを前後に動かしながら薄く塗っていきます。このままだけでもいいのですが、重要なのがコルクでの摩擦です。これなら固形ワックスのようにアイロンも必要ないですし、かすも出ないので、部屋の中でも手軽にできますね。
コルクを使う意味とは?
Grab編集部:これは何のためにコルクでする必要があるのでしょうか。
マンザーノ:コルクで摩擦すると熱でワックスが浸透しやすくなるので、ここのひと手間はぜひお願いしたいです。
Grab編集部:次は何をやっているのでしょうか。
マンザーノ:最後に、ナイロンブラシでいたに細かく掘られている溝(ストラクチャー)にたまったワックスをかきだすことで、より滑走性能が高まります。つやつやになった板を見るのは気持ちがいいですね!
あとはスキー場から帰ってそのままにしてしまうと、エッジがさびてしまうので、消しゴムのようなさび取りもあると、シャープなターンができますよ。
ワックスが上達への近道
大手スポーツショップのスーパースポーツゼビオでは、購入したメンテマイスターを滑走面にワクシング加工(税別1,500円)してくれる店舗もあるので、自分で塗るのが心配な方は、プロスタッフに専用器具を使ってやってもらう方法もあります。滑りとワックスの違いがわかるように、春までゲレンデに通い続けましょう!