連載企画第14弾!今回はパラリンピック日本代表の小栗大地さんのインタビューです。実は筆者が高校生の時からの付き合いで、一緒にスノーボードをしてた仲間。今回はその小栗さんに怪我からの復活、今についてなど語っていただきました。
今回紹介するライダーはこちら
- 名前:小栗大地(おぐりだいち)
- 職業:会社員(アスリート契約)
- スノーボードスタイル:スノーボードクロス、バンクドスラローム
足が切れたら何ができる?
仕事中の出来事で
━━━小栗さん、お久しぶりです。今は会社員ですか?
小栗:そう。今39歳なんだけど、30歳の時に今の会社に就職しました。最初は現場仕事で毎日外での作業が多かったですね。
━━━そうなんですね。スノーボードも続けてたんですか?
小栗:はい。就職するまでは夏バイトして、シーズン中はプロ活動っていうサイクルで動い、30歳からは土日がメインで滑るようになりましたね。
小栗:そんな矢先に仕事中の事故で足を切ることになってしまいました。現場作業中に鉄板の束が落ちてきたんです。
━━━事故直後のことは覚えていますか?
小栗:もちろん覚えてます。すぐ起き上がれたのですが右足の感覚がなく、変な方向に曲がっているのかと思いきや、離れた所に転がっていたんです。これもう右足はなくなると思いました。でももしかしたらくっつくかもしれないと思い、冷やしたり応急処置してから病院に行きました。
━━━病院へ着いてから、お医者さんはなんとおっしゃったんですか?
小栗:病院についてすぐ手術。目が覚めて、お医者さんからもう足はくっつきませんと言われました。その時私は意外と冷静に事実を受け止めることができ、既に前を向いて行く気持ちの方が強かったです。まず1番にスノーボードってできるのかと思いました。
小栗:いつ復帰してもいいように、手術後もトレーニング続けてたんです。入院中することなくて、片足で自転車漕いだりしてました。そしたら傷口が腐ってきてしまい、1ヶ月後にまた手術。今思えば無理しすぎました。
━━━義足が作られるまでどのくらいかかったんですか?
小栗:最終的に1ヶ月半くらいかかって、初めて歩行用の義足を履きました。怪我してから2週間で義足ができたんだけど、傷口が腐ってからまた足の形が変わってしまい、また作り直してもらったんです。
パラリンピックへの道
義足でかっこよく歩けるようになれ
━━━本格的にスノーボードが再開できたのはいつですか?
小栗:いつだろう?怪我したのは7年前の8月で、その年の12月に義足つけて雪上には立っていました。でも義足が歩行用で、スノーボード用じゃなかったので、あまり上手くは滑れませんでした。スノーボード用じゃないとダメだと思い、ギブスを作っている先生に相談しました。
━━━義足っていろんな種類があるんですね。
小栗:そうです。ちゃんとしたスノーボード用もあります。何が違うって、歩行用は足首が曲がらなくて、膝がスカスカ。だからスノーボードには向かないんです。逆にスノーボード用は足首、膝の曲がる硬さを調節できるようになっています。
小栗:ちょうどそのときにソチパラリンピックの時期で、ソチからスノーボードが正式なパラリンピックの種目になったことを知り、これは行くしかない!と思い、目指し始めました。
━━━1番背中を押してくれたのはどなたですか?
小栗:その義足を作ってくれた先生ですかね〜。「義足を履いてかっこよく歩けるようになれ。そしたらどんなスポーツでもできるぞ。」という言葉を頂き、俄然やる気が出てきました。
平昌パラリンピックでの経験値
━━━そして迎えた平昌パラリンピックはいかがでしたか?
小栗:パラだとIPCと言う国際パラリンピック委員会という組織があって、パラリンピックの前シーズンランキングで7位以上だと本戦の出場権がもらえるんです。俺はそれで6位で無事にパラ内定が決まりました。
小栗:結果はバンクドが6位、クロスが7位でした。終わってからは、まだまだいけるなって思いましたね。
━━━次も狙うということですね?
小栗:もちろん!でも俺スノーボードのスタンスが元々レギュラー(左足前)なんです。義足が右足なので右足が後ろ足になります。でもスノーボードって結局後ろ足が重要で、力を入れるのも後ろ足になんです。となると、後ろ足が義足だと力を入れるのは限界があると感じ、平昌終わってからは左足が後ろにくるスタンス(グーフィー)に切り替えて練習をしています。
━━━では、レギュラーだったのをグーフィーに切り替えたんですね?
小栗:そう!頑張ってます。だんだん慣れてきました。次の北京パラリンピックまでに間に合わせます。
また4年やりたい
━━━小栗さんの次なる目標はなんでしょうか?
小栗:北京パラリンピックでメダルを取って、さらにその次のオリンピックに出ることです。メダルを取っただけではダメなので、4年後につなげるために今頑張っています。そこまでは選手として競技人生を続けていきたいです。
━━━さすがです。今のシーズンはオフトレメインですか?
小栗:はい。今は地元に帰ってトレーニングしながら家族との時間を過ごしています。
━━━今シーズンの活躍期待しています。頑張ってください!
北京パラリンピックまであと2年
現在は秋に行われるヨーロッパでの大会に向けて陸上トレーニングに励む小栗さん。筆者は小栗さんと知り合いになって長いので昔からストイックなのは知っていたのですが、こうして第一線で競技を続けている姿はとても輝いていました。年齢を感じさせないアスリートとしての姿勢も見習うべきですね。小栗さん、貴重なお話をありがとうございました!