サーフィンをしたことがある方なら一度は耳にしたことがある「WSL」。正式には「World Surf League」といい、プロサーフィンツアーを統括する国際的な団体です。今回は、サーファーなら知っておきたいWSLの活動について詳しく紹介します。
WSLとはどのような組織?
WSLを日本語で表すと世界プロサーフィン連盟。1976年に設立され、本拠地はアメリカカリフォルニア州のサンタモニカにあります。アメリカだけでなく、南米やアジアなどにも支社を持つ、プロサーファーのためのグローバルな組織です。
WSLはツアーとイベントで構成
WSLが開催している国際コンテストは、年に180を超えるとされています。その筆頭は、プロサーファー憧れの舞台「チャンピオンシップツアー(CT)」です。また、CTの予選リーグにあたる「チャレンジャーシリーズ(CS)」「クオリファイングシリーズ(QS)」を運営。世界トップレベルのサーファーに絶好のコンディションが提供できるサーフポイントを選び出し、コンテストを開催しています。
世界へ羽ばたくためのコンテストの開催
WSLは、優勝するとジュニア世界一と賞される「ワールドジュニアチャンピオンシップ」、略して「WJC」も開催しています。WJCは、18歳以下の選手が出場するジュニアツアーで、若手の選手が世界へ羽ばたく重要なステップです。WSLは、未来の世界チャンピオンが誕生するための道づくりも手がけています。
WELが誕生するまでの歴史
世界各地の優良なビーチで開催されるコンテストの数々を運営するWSL。しかしここまでの道のりは簡単ではありませんでした。
始まりは2人のレジェンドが作ったIPS(1976~1982)
WSLは、1976年に当時ハワイで活躍していたフレッド・ヘミングスとランディ・ラリックが発足した、IPS(International Professional Surfers)が基盤となっています。フレッド・ヘミングスは、1968年のISA世界チャンピオンになった実績を持つサーファー。一方、ランディ・ラリックも各国でサーフィンをしてきたトラベルサーファーで、サーフボードブランド「BEAR」のメインシェイパーとしても有名な人です。
2人のレジェンド的存在のサーファーがIPSを誕生させるまでは、世界で統一されたプロサーフィン組織がありませんでした。IPSは、ハワイやオーストラリア、南アフリカで開催されていたコンテストを統一しています。また、ランキングをポイント制にして世界チャンピオンを選出するシステムを作り出したのです。
2つのシステムを作り上げた2人の功績は、大きいとされています。
コンセプトを進化させたASP(1983~2014)
1983年にIPSからASP(Association of Surfing Professionals)へと変わり、組織のトップも変わりました。ASPで指揮をとったのは、オーストラリア出身のイアン・カーンズです。彼は、サーフィン界に名を残すレジェンドの1人。1975年デューク・カハナモク・インビテーショナルで優勝。1977年と1980年にはワールドカップで優勝するなど実力派のサーファーです。
サーフィンのことをよく知る彼が打ち出した新たなコンセプトは「世界最高のサーファー、世界最高の波」。コンテストツアーは、高品質のサーフィンができる地を選び行われました。このASPのコンセプトは、現在のWSLに受け継がれています。
ASPでは、ジュニアツアー(18才以下)とマスターツアー(36才以上)のシステムを導入。また、出場するサーファーとそれを支えるスポンサーが満足できる組織作りが進められました。
2015年世界プロサーフィン連盟WSLの誕生
WSLではASPより進化した組織作りが進められました。新たなイベント開催地が加わり、ライブ中継はグレードアップ。「サーフィンとサーフィンの文化を、伝統とともに次世代に残すこと」を目指し運営されています。
新たに動き出したWSLは、トップレベルのサーファーたちが出場し、世界の頂点を決めるチャンピオンシップツアー、予選シリーズ、ビッグウェーブツアーなどといったコンテスを開催。パイプインビテーショナルやブラスベルカルクベイチューブマスターズといったイベントも手がけています。
以前は、WSL支社が日本にもありましたが2020年5月31日で閉鎖。日本のオペレーションはオーストラリアのWSL APAC office で行われています。
サーファーの憧れの的!WSLのツアー
WSLは、男性と女性のチャンピオンシップツアー(CT)やチャレンジャーシリーズ(CS)、予選シリーズ(QS)のツアーをコーディネート。その他、ロングボードチャンピオンシップ、ジュニアチャンピオンシップ、ビッグウェーブツアー、XXLビッグなどのツアーもあります。
2021年からWSLのツアー体制が大きく変更され、「QS」「CS」「CT」の3部構成に変わりました。
プロサーファーが頂点を目指すチャンピオンシップツアー(CT)
世界トップクラスとされるプロサーフィンツアーのCTは、2~8月にかけて最大12戦が行われます。会場となるのは、オセアニアやアジア、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパのポイント。サーファーなら一度は行ってみたい最高の波が打ち寄せる場所ばかりです。
出場できるのは、以下のようになっています。
・CTランキング上位
・セカンドリーグのWQSの上位
・ワイルドカードから選出されるメンズ34名
・ウィメンズ17名のプロサーファー
9月の「WSL Finals」に進出できるのは上位5名。そこで勝ち抜いたプロサーファーが「ワールドチャンピオン」に輝きます。ハイレベルな資質を持つプロフェッショナルなサーファーたちが参加するCT。繰り広げるサーフィンは見ごたえたっぷりです。
翌年のCTに残留できるのは、メンズの場合、最終ランク上位20名のみ。ウィメンズの場合は、最終ランク上位9名のみです。
WSL チャレンジャーシリーズ(CS)
2021年8月からスタートする「チャレンジャーシリーズ(CS)」は、メンズ96名、ウィメンズ64名が競い合います。上位12名が翌年のCT参加資格を獲得。ウィメンズの場合はランキングの上位6名が翌年のCT参加資格を得ることになります。
WSL予選シリーズ(QS)
QSは、1シーズンに50戦ほどあり、日本でも行われています。CSに進むのは、アジアから6名の選手でメンズもウィメンズも同じです。ポイント算出方法は、2021年度の場合7月4日までに開催される日本国内QSイベントの結果および2020年のポイントの合計となっています。
予選といえどもハイレベルなサーファーが出場しており勝ち上がるのはかなりの難関です。その中から次のステップCSへ進む選手が選ばれます。
まとめ
WSLのCTは、ドリームツアーであり、誰もが認める世界チャンピオンが選出されるサーファーたちの憧れの舞台を運営しています。CTに出場できるのは、ツアーを勝ち抜いてきた選ばれしトップクラスのサーファーのみです。
サーフィンをしない方が見ても、CTで繰り広げられるパフォーマンスには圧巻されるでしょう。また、CTが行われる会場は、オーストラリアやインドネシア、ハワイなど波が良いとされるところ。美しいロケーションも見どころです。