トリプル・クラウンは、WSLで実施されているさまざまな大会のなかでも、特に知名度と歴史のある大きなシリーズです。この記事では、トリプル・クラウンの概要や、今までの優勝者のプロフィールや戦績、近年のトリプル・クラウン開催同行などをまとめてご紹介します。
トリプル・クラウンはWSLのシリーズ戦
トリプル・クラウンは、3つの王冠の文字が意味する通り、3つの大会における総合優勝者のことです。第1回のトリプル・クラウンは、1983年に実施され、その後毎年行われています。
トリプル・クラウンは毎年11月から12月に実施
トリプル・クラウンは、正式名称がVans Triple Crown of Surfingといい、WSL(World Surf League)のシリーズ戦のうち、ハワイのオアフ島にあるノースショアで行われる3つの大会をまとめたものです。
開催時期は11~12月と年末で、「ハワイアン・プロ」「VANSワールド・カップ」「ビラボン・パイプ・マスターズ」の3大会の合計スコアを集計して、最も得点が高い選手から順位が付けられます。
世界最高峰の知名度・伝統がある
ハワイでは、11~2月にかけて、数メートルから10mほどの大きな波が打ち寄せるため、冬のノースショアでは迫力のあるライドが見られます。トリプル・クラウンのなかでも「ビラボン・パイプ・マスターズ」はWSLの最終戦のため、特に注目される試合です。
トリプル・クラウンは、それぞれに難易度の高い3つの大会を制したことを示します。そのため、WSLのワールドタイトルよりもトリプル・クラウンで勝利することを名誉とするサーファーもいるほど知名度と人気、伝統があります。
トリプル・クラウンの優勝者とは
ここでは、トリプル・クラウンの優勝者について紹介します。
1983年の初代優勝者はマイケル・ホー
マイケル・ホー(Michael Ho)は、1957年にハワイで生まれ、第1回と第3回で優勝した戦歴をもつサーフィン界のレジェンド。ノースショアは、波が巻くバレルが頻出する難易度が高い海ながら、マイケル・ホーは還暦を超えても日々波に乗る様子がみられます。
マイケル・ホーの弟は、4回のトリプル・クラウン優勝経験のあるデレク・ホー。また、息子のメイソン・ホー、娘のココ・ホーも有名なサーファーです。
トリプル・クラウンで複数回優勝しているサーファー
トリプル・クラウンは、出場するだけでも名誉ですが、さらに何度も優勝を重ねているサーファーがいます。優勝回数が多いサーファーをチェックしておきましょう。
・サニー・ガルシア:6回
ハワイ出身のサニー・ガルシア(Sunny Garcia)は1970年生まれのプロサーファー。1986年(17歳)の時にプロ入りを果たしたあとはトリプル・クラウンの優勝回数が6回といまだ誰も破られていない記録を持っています。優勝年度は1992年、1993年、1994年、1999年、2000年、2004年で2000年度はWCTワールドチャンピオンにも輝いています。
・アンディ・アイアンズ:4回
1978年にハワイで生まれたアンディ・アイアンズ(Andy Irons)は、2002年、2003年、2005年、2006年の4回トリプル・クラウンで優勝を果たし、ASPワールドツアー(現在のWCT)における3年連続のワールド・チャンピオン(2002~2004年)に輝いています。
そのほかクイックシルバー・プロ・フランス (2003~2005年)、リップ・カール・プロ・サーチ(2006年、2007年)で優勝するなど強さが際立っていました。しかし、2010年にリップ・カール・プロ・サーチ第9戦に出場するため現地入りしていたところ、突然体調を崩し32才で急逝しました。
2018年には、「Andy Irons: Kissed By God」として映画が作られています。
・デレク・ホー:4回
デレク・ホー(Derek Ho)は、マイケル・ホーの実弟で1964年生まれのプロサーファー。トリプル・クラウンでは、1984年、1986年、1988年、1990年に優勝を果たしています。さらに、パイプラインマスターチャンピオン(1986年、1993年)、デュークインビテーショナル(1984年)の記録保持者です。
・ジョン・ジョン・フローレンス:4回
13歳でトリプル・クラウンに初出場したジョン・ジョン・フローレンス(John John Florence)は、1992年にハワイで生まれました。トリプル・クラウンでは、2011年、2013年、2016年、2020年と優勝者です。2018年と2019年は、けがで途中欠場しているものの、復帰シーズンの2020年では見事優勝を果たしました。
最近のトリプル・クラウン優勝者
ハワイ出身のサーファーが強い印象があるなか、ブラジルやアメリカにも有力な選手があることがわかります。ここでは、過去のトリプル・クラウン優勝者と現在の戦績についてご紹介します。
・2020年、2016年優勝:ジョン・ジョン・フローレンス(ハワイ)
ジョン・ジョン・フローレンスは、レギュラースタンスで、東京2020夏季オリンピックのアメリカ代表選手に選出されています。2011年7月がWSLの初セッションで、ルーキーイヤーが2012年。2021年男子としてのQSは4位、勝利したヒートが11、ヒートスコアの平均が13.61です。
・2019年優勝:ケリー・スレーター(アメリカ)
ケリー・スレーター(Kelly Slater)は、1972年アメリカ生まれで、レギュラースタンス。2021年時点で、11の世界タイトル、55のキャリアで勝利を収めています。「Greatest Of All Time」の頭文字を取って「G.O.A.T」と称されることも。
大きな波をすり抜けるチューブライディングの第一人者で、1992年に20歳でWSL(旧ASP)ワールドツアーを最年少で取得した一方、39歳で優勝する最年長記録の両方を持っています。1989年メンズCTが初セッションで、ルーキーイヤーが1990年。
2021年男子としてのQSは27位、勝利したヒートが4、ヒートスコアの平均が8.71です。
・2018年優勝:ジェシー・メンデス(ブラジル)
ジェシー・メンデス(Jesse Mendes)は、1993年ブラジル生まれで、グーフィスタンス。同じくサーファーのタティアナ・ウェストン・ウェブ(Tatiana Weston Webb)と交際していることでも知られています。2008年のWorld Qualifying SeriesがWSLの初セッションで、2020年男子としてのQSは62位、勝利したヒートが1、ヒートスコアの平均が12.16、平均のウェーブスコアが3.14です。
・2017年優勝:グリフィン・コラピント(アメリカ)
グリフィン・コラピント(Griffin Colapinto)は、1998年アメリカ生まれで、レギュラースタンス。カリフォルニア出身者としては、初めてトリプル・クラウンを制した人物です。
2011年7月がWSLの初セッションで、2021年男子としてのQSは6位、勝利したヒートが9、ヒートスコアの平均が11.80、平均のウェーブスコアが3.03。
・2015年優勝:ガブリエル・メディーナ(ブラジル)
ガブリエル・メディーナ(Gabriel Medina)は、1993年ブラジル生まれで、グーフィスタンス。東京2020夏季オリンピックでブラジル代表資格を持っています。2008年メンズQSが初セッションで、ルーキーイヤーが2012年。2021年男子としてのQSは1位、勝利したヒートが17、ヒートスコアの平均が12.55です。
2020年のトリプル・クラウンはオンライン対戦に
新型コロナウィルス感染症への対応のため、トリプル・クラウンも通常の開催が難しくなっています。2020年のトリプル・クラウンは、デジタル化した状態で試合を行うこととなりました。
デジタル化されたトリプル・クラウンの開催概要
オンライン開催であっても、トリプル・クラウンは、例年通り「ハレイワ」「サンセットビーチ」「パイプライン」の3つのビーチを舞台にすることとなりました。
ただし、評価については動画で行われるため、サーファーは普段よりも時間をかけて挑める状況になっています。2020年12月21日~2021年1月15日の間にそれぞれの3会場で撮影した動画を2本提出し提出された動画を審査。優勝者は、2021年1月19日に決定し、オンライン表彰式が行われる形式です。
優勝者はジョン・ジョン・フローレンスとカリッサ・ムーア
2020年のトリプル・クラウンでは、ジョン・ジョン・フローレンスと東京2020夏季オリンピックのアメリカ代表資格を保持するカリッサ・ムーア(Carissa Moore)が選ばれました。
・男子優勝:ジョン・ジョン・フローレンス
合計スコア:164.5ポイント
ハワイアン・プロ(ハレイワ):56.6
VANSワールド・カップ(サンセットビーチ):55.7
ビラボン・パイプ・マスターズ(パイプライン):52.2
・女子優勝:カリッサ・ムーア
合計スコア:134.5ポイント
ハワイアン・プロ(ハレイワ):54.1
VANSワールド・カップ(サンセットビーチ):39.4
ビラボン・パイプ・マスターズ(パイプライン):41
そのほか、日本人選手として、五十嵐カノアや大原洋人、稲葉レオらも活躍しています。動画は、トリプル・クラウン公式サイトで公開されているので、好きなサーファーのライドを楽しむことも可能です。
まとめ
トリプル・クラウンは、1983年から毎年ハワイで開催されている歴史と伝統のあるシリーズ戦です。優勝者に着目してみると、ハワイ出身者が多いものの、アメリカやブラジルの選手も活躍しています。なかにはオリンピックの代表選手も含まれているため、トリプル・クラウン以外でも各選手の活躍を目にする機会があるかもしれません。