ハワイの空気を感じさせる音楽で、世界中にファンを持つジャック・ジョンソンは、ミュージシャンやプロデューサーとして有名ですが、10代でQuicksilverに所属したことのある実力派のプロサーファーでした。不慮の事故により音楽の世界へと軸足を移したジャック・ジョンソンの人生とその魅力を紹介します。
ジャック・ジョンソンってどういう人?
ジャック・ジョンソン(Jack Jhonson)は、日本にもファンの多いミュージシャンです。過去には、トップクラスのサーファーとして、世界有数の大会に出場していました。彼が、なぜ音楽の道へと活動拠点を変えていったのでしょうか。
「世界一美しく危険な波」で生まれ育つ
ジャック・ジョンソンは、1975年5月18日生まれ、ハワイ州オアフ島ノースショア出身です。「世界一美しく危険な波」のサーフィンスポットとして知られ、ビッグウェーブに挑むサーファーの憧れの地でもあります。
ジャック・ジョンソンは、壮大な波が押し寄せるビーチで育ち、まだよちよち歩きの頃から父親のサーフボードに乗せられていたといいます。幼いうちからサーフィンに親しんで育ち、高校生になると「パイプライン・マスターズ」といった世界有数の大会に出場し、注目サーファーの1人となりました。
トップサーファーからの転身
10代の頃から、その才能と技術を認められたジャック・ジョンソンは、数々の世界的な大会のスポンサーを務めるQuicksilverとプロ契約を結び活躍しました。しかし、17歳のときにサーファーとしての一生を変えてしまう悲劇に見舞われます。
サーフィン中に大事故に遭い、海底のサンゴ礁に頭を強くたたきつけました。この事故により、ジャック・ジョンソンの頭蓋骨にはひびが入り、頭を100針も縫う大怪我を負いました。一命はとりとめたものの、長期間の療養を余儀なくされ、プロサーファーの道を断念せざるを得なくなりました。
失意の中で過ごすジャック・ジョンソンでしたが、やがて以前から興味を持っていた「音楽・映像」という新たな方向へと踏み出しました。
映像とサーフミュージックでの成功
サーフィンからステージを変える決心をしたジャック・ジョンソンは、高校卒業後カルフォルニア大学サンタ・バーバラ校で映画を専攻しました。卒業後の1999年に、サーフ仲間のマロイズとともにサーフィンのドキュメンタリー映画「シッカー・ザン・ウォーター」や「セプテンバー・セッションズ」を制作します。
ロブ・マチャドやケリー・スレーターなど数多くのトップサーファーが躍動する姿をとらえたこの作品は、世界中のサーフィン愛好者の支持を得ました。さらに、アメリカのサーフィン誌の代表格「Surfer」から最優秀ビデオ賞を授与。
担当したサーフミュージックも大きな話題を集め、音楽と映像の世界での立ち位置を確かなものにしました。
サーファーとしても活躍中
世界的なミュージシャンとして成功をおさめた後も、サーフィンはジャック・ジョンソンの生活の一部です。子どもの頃から慣れ親しんだ海は、彼の人生から切っても切り離せないものでしょう。ジャック・ジョンソンの技術は、2019年時点でも衰えていません。
ノースショアのハレイワで撮影されたサーフィンの映像は、見る人を魅了しています。撮影の舞台となっているハレイワは、ノースショアの中でも潮の流れが激しく、特に難しい波です。子どもの頃から知る地元とはいえ、そうした難所でもジャック・ジョンソンのサーフィンは大きく、優雅です。
ジャック・ジョンソンの心地よい音楽と同様に、流れるようなパフォーマンスでリラックス感すら漂わせながらターンをこなします。音楽や映像のみならず、サーフィンの技術も、今なお「一流」という多才さに驚かされ、ひきつけられるファンも少なくありません。
ジャック・ジョンソンと音楽
ジャック・ジョンソンの音楽は、サーフミュージックやサーフロック、またそのナチュラルな音楽性からオルタナティブロックと呼ばれることもあります。柔らかく耳に響く声が印象的なジャック・ジョンソンの登場により、それまでのサーフミュージックといわれていたハード系の音楽が一変しました。
ここでは、ジャック・ジョンソンのサーフミュージックの魅力を紹介します。
ジャック・ジョンソンの音楽性
ミュージシャンとしての名声が高いジャック・ジョンソンは、ブラッシュファイアー・レコーズ(Brushfire Records)というレーベルのオーナーでもあります。多くの著名ミュージシャンの音楽を手がけ、プロデューサーとしての手腕も有名です。
もちろん、ジャック・ジョンソン自身もミュージシャンとして世界的な活動を続けており、東日本大震災の際にはツアーのために大阪に来日していました。震災によってツアーは中断されましたが、義援金を寄付するなど思いやりを示しています。
世界中のファンを魅了し続けるジャック・ジョンソンの音楽は、アコースティックギターが奏でるリラックス感や心地よさが特徴です。弾き語りのような柔らかいメロディ、飾り気のないナチュラルな歌声は、まさに「波」を連想させてくれます。
海とサーフィンと音楽をうまく融合させ、自らが高い技能を持つジャック・ジョンソンは、波の動きを知り、サーフィンの楽しさや厳しさも理解しています。そうしたジャック・ジョンソンが作る音楽には、誰にも真似できないサーフミュージックとしての魅力が溢れています。
サーファーの中には、ジャック・ジョンソン以外にも、ミュージシャンとして活動する人が少なくありません。映画に出演したケリー・スレーターとも、ギターセッションで共演しており、サーフィンと音楽が重なり合うことで彼の人生に深みが増しています。
ジャック・ジョンソンの主な楽曲紹介
・Traffic In The Sky(トラフィック・イン・ザ・スカイ)
ハワイの自然や空に浮かぶ雲を思わせる、アコースティックなリズムが癒しを与えます。ジャック・ジョンソンが「環境音楽のようだ」と言う理由もうなずけます。サーフィンの後、ゆったりしたい気分のとき、爽やかな朝を迎えたいときなどにぴったりです。
・Good People(グッド・ピープル)
小刻みなリズムが心地よい、軽快な曲です。ややハスキーなジャック・ジョンソンの声が、ギターサウンドとマッチし、独特の世界観を感じさせます。ウォーキングやドライブシーンにもおすすめです。
・Sleep Through the Static(スリープ・スルー・ザ・スタティック)
ジャック・ジョンソン初心者ならば、ぜひ押さえておきたいのがこちらの曲です。メロウなリズムが、すんなりと耳に入ってきます。休日に寝転がって聞いたり、外歩きしながら聞いたりしても楽しめる音楽です。
・we’re going to be friends(ウィアー・ゴナ・ビー・フレンズ)
素朴なリズムと優しい歌声が牧歌的な印象を与える曲です。少し疲れたときや就寝前に聞くと、心が落ち着きます。
・I Got You(アイ・ガット・ユー)
出だしの口笛とギターの組み合わせが何ともユニークな一曲です。柔らかな声質でありながら、キレの良さも感じます。リズムはゆったりとしていますが、軽快さもあり不思議な魅力で満ち溢れたこの曲は、まさにジャック・ジョンソンならではと言えるかもしれません。
まとめ
若い頃からサーフィンの才能を認められ、時代のトップを走り続けるジャック・ジョンソン。その後に大きな事故に遭遇します。しかし、プロの道を断たれた後も、決して人生をあきらめることはありませんでした。
過去の経験を含めた、その人間性から生み出されるサーフミュージックが、人々の心を魅了し続けています。世界的なアーティストとなった今も、時々サーファーとしての素晴らしいテクニックを披露。その姿は相変わらず、サーフィン愛好家の憧れです。
サーフミュージックはもちろんですが、ジャック・ジョンソンのプロデュースするサーフィン映像は、一見の価値があります。ジャック・ジョンソンの世界に一度触れてみてはいかがでしょうか。