サーフスケートで一世風靡のベニスビーチ発祥のZ-BOYSを描いたロード・オブ・ドッグタウンは全スケーターが見るべき映画

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2005年に制作・公開された『ロード・オブ・ドッグタウン』は、伝説のスケートチームとも呼ばれる「Z-BOYS」の実話を基に映画化された作品です。今回は、本作を観る上で知っておきたい基礎知識などをまとめてご紹介。スケートボード好きは、ぜひチェックしてください。

サーフスケートのカルチャーブームを作ったZ-BOYS

現在のサーフスケートの原型を生みだしたともされる、ドッグタウン出身のスケートチーム「Z-BOYS」。その革新的なスタイルは、当時のスケートボード界に大きな影響を与えました。今なお語り継がれる伝説のチームについて、実話を基にした映画を観る前に予習をしておきましょう。

Z-BOYS以前のスケートボード

1940年代頃にはじまったとされるスケートボードの歴史。当時は街中を移動するための乗り物としてや、サーファーたちが波のない日に乗るといった用途が主だったそうです。

その後1960年代にはスケートボードの大会が開鎖されはじめますが、これは曲乗り要素が強いものでした。トリック自体はあったものの、それは単なる回転であったり、デッキ上で逆立ちをしたりといったもの。型どおりの技を披露し競う合う競技であり、クールでテクニカルというよりは、曲芸に近い印象を受けます。

その後、1970年代になるとスケートボードのパーツが進化しはじめます。もっとも大きな変化はウレタン製ウィールの登場。グリップ力が生まれたことで、サーファーからの人気が高まりました。そのほか、シールドベアリングが開発され、ウィールが回る機能が追加されます。

まだまだ認知度の低かったスケードボードの大会ですが、スケートボードの進化によってスラロームやダウンヒルなどが競技化。世界中でブームを巻き起こしました。そして、この時期に現れたのが映画の主役でもある「Z-BOYS(ズィーボーイズ)」です。

革新的なサーフィンスタイルによるオールドスクールの確立

アメリカ・カリフォルニア州のベニスビーチに店を構えたサーフショップ「ゼファー(ZEPHYR)」。店主であるジェフ・ホウは、ショップでたむろしていた少年たちを集め、スケートボードチームを結成。それが「Z-BOYS」のはじまりです。

現在も名が知られているスケーターとしては、ステイシー・ペラルタ、トニー・アルバ、ジェイ・アダムスが挙げられます。この3名は映画のなかの中心人物でもあり、トニーとジェイは役作りの指導、ステイシーは脚本に関わりました。ちなみに、メンバーのなかにはショウゴ・クボという日本人も名を連ねています。

彼らが大会で披露したのは、スライドターンや激しいポンピングなどを含む、スタイリッシュで過激なものでした。このムーブは、サーフィンの動きを表現したものです。フィギアスケート的とも揶揄される当時のスタイルとは真逆とも言えるでしょう。今まで見たこともないライドに、会場は大きな驚きに包まれたに違いありません。

さらに革新的だったのが、それまで地面で滑るのが当たり前だったスケートボードの舞台を、プールへと移行したことです。他人の家に忍び込んだZ-BOYSは、なんとそこでプールスケーティングをはじめました。

平面とは異なる立体的なライドはまさに型破り。これが現在のボウルやヴァート・ランプの原型になったことは想像に難くありません。何から何まで新しいサーフィンスタイルはその後、次第に多くの支持を得るようになり、現在のオールドスクールと呼ばれるスタイルを確立したと言われます。

まさに伝説…トニー・アルバやステイシー・ペラルタ、ジェイ・アダムスの物語

ここからは、映画の内容についても少しだけ触れていきます。

作品の序盤では、トニー・アルバやステイシー・ペラルタ、ジェイ・アダムスらがZ-BOYSを結成し、スケートボードの大会で観客を沸かせるシーンが描かれます。ショップにたむろする悪ガキが、観客を魅了していく流れは、まさに伝説のはじまりとも言うべき場面です。

その後、Z-BOYSはプールでスケートボードの練習をはじめ、さらなる縦横無尽なプレイスタイルを身に着けていきます。大会への出場も繰り返し、順風満帆な日々を送るのですが、その後で転機が訪れ……この続きは、ぜひ映画を直接観てご確認ください。

劇中のライドシーンにも注目

本作は、劇中でのライドシーンも見所のひとつです。ただし、キャストは皆、元々はスケーターではなかったのだとか。なんと映画出演が決まってから猛特訓を重ね、テクニックを身に着けたそうです。

ちなみに、キャストの練習に立ち合ったのはZ-BOYSのメンバー。本人直伝だからこそのリアルなプレイによって、映画が成り立ったと言っても過言ではありません。

スケートボードが好きならぜひ見て欲しい映画

『ロード・オブ・ドッグタウン』で描かれているのは、いわゆる第二世代とされるサイドウォークサーフボードの時代です。現在のサーフスケートの礎とも言えるべきオールドスクールスタイルが生まれた経緯を、青春映画として楽しめる貴重な作品とも言えるでしょう。

2000年台には世界的なサーフィンブームが巻き起こり、そのなかではサーフスケートスタイルが流行にもなりました。これは映画が公開された時期とも重なります。Z-BOYSの存在が、時代を超えて世界に影響を与えたとも言えるでしょう。

胸を熱くするストーリーが、スケートボードへのモチベーションに変わる

スケートボードは言わば、挑戦をし続けるエクストリームスポーツです。昨日までできなかった技が、積み重ねた練習によって開花する瞬間に、大きな達成感を覚える方も多いでしょう。

本作の主人公たちも、さまざまなことに挑戦をしていきます。そのなかで、栄光や挫折、周りの環境の変化による葛藤などが訪れますが、最後にはスケートボードへの熱い想いが残ります。

スケートボードをしている人なら、主人公たちの熱にほだされ「明日は滑りにいこう」という気持ちになるでしょう。未経験の方でも、きっとスケートボードに興味を持っていただけるはずです。

スケートボードがカルチャーであることを証明する名作

本作の見所は、胸が熱くなるようなストーリーや、魅力的な登場人物はもちろん、スケートボードをカルチャーとして捉えた作りです。

たとえばファッション。現代のスケートファッションのベースとも言えるカルフォルニアスタイルに身を包んだ登場人物たちは一様にクールでスタイリッシュ。ブロンドヘアー×VANSがライドする姿は、憧れすら覚えます。現在は高値になっているZ-BOYSのヴィンテージTシャツが欲しくなってしまう人も多いでしょう。

また、サウンドトラックも非常に評判です。テーマ的に用いられる『Wish You were Here/スパークルホース and トム・ヨーク』はもちろん、当時の雰囲気を演出するイギー・ポップやデヴィッド・ボウイ、ブラック・サバス、T・レックスなどの名曲も映画に華を添えます。改めて、スケートボードと音楽とが密接に関係し合っていることを想起させてくれるでしょう。

こうした作り込みから感じるのは、スケートボードが単なるスポーツではなく、音楽やファッション、アートなどと融合したカルチャーであるということ。それら全てが合わさることによって、時代やスタイルが醸成されていったという学びがあります。

まとめ

スケートボードを楽しんでいる方はもちろん、そのファッションに興味がある方やカルチャーを知りたいという方にも、『ロード・オブ・ドッグタウン』はおすすめの映画です。時代を作った若者たちのストーリーは胸に訴えるものがあり、明日への活力をもらえるでしょう。

作品自体はDVDでの購入や配信レンタルなどで鑑賞できます。本記事で興味を持った方は、ぜひ一度ご覧ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加