波にもさまざまな種類があり、サーフィンをする人にとって「波を知る」ことがとても大切です。また、波の種類によってサーフボードを変えたり、テイクオフのタイミング、ライディングのやり方を調整することも重要になります。ここではトロい波に適したサーフボード、テイクオフやライディングのポイントをご紹介します。
トロい波ではロッカーが抑えめの浮力ボードがおすすめ
地形や風の影響で波は変化し、私たちにさまざまな表情を見せてくれます。サーフィンで重要なのは「波を知ること」です。波の特徴を捉え、波を思うままに操ることができれば、更にサーフィンの魅力に引き込まれることでしょう。
サーフィンについての本や雑誌、動画などで「トロい波」という言葉を目にしたことはあるでしょうか。「掘れた波」「厚い波」など、サーファー同士の会話にも登場する独特な波についての言葉は初めての人にとって耳慣れしないので、疑問に思う人も多いかもしれません。
このトロい波というのは、波がブレイク(崩れた)後にも漫然と延々続いていく波のことをいいます。遅めのゆったりした波のことで、「今日の波はメローだったよね」なんて言葉で表現されることもあります。メローというのは柔らかく落ち着きのある様子を表現した言葉です。
このトロい波は速い波と違って速度がゆっくりな分、テイクオフのタイミングが掴みやすい波です。つまり、上級者よりも初心者向きの波と言ってよいでしょう。
このような波では、ロッカーが控えめの浮力ボードがおすすめです。ロッカーというのは簡単にいうとサーフボードの湾曲(カーブ)している部分のことをいいます。サーフボードのノーズ部分にロッカーがあるものは「ノーズロッカー」、テールの部分だと「テールロッカー」というようにそれぞれに名前がつきます。
トロい波の場合には波の押す力を期待できないので、ロッカーカーブの少ない平らな状態に近いボードを選ぶのがポイントです。ロッカーカーブが少ない分、加速しやすくなるためトロい波でもぐっとスピードを出して進みやすくなるでしょう。
逆に早い波でコントロール機能を重視したいという場合には、ロッカーカーブが強いボードを選択するとよいでしょう。次に浮力という観点でいうと日本の波は水量が少なく海外の波に比べて波が押してくれる力が弱いといわれています。
ハワイやオーストラリアでのサーフィンの様子を見てみると、ダイナミックな波を乗りこなしていますよね。トロい波や日本の地形で生まれる弱めの波は、浮力の大きいサーフボードがおすすめです。
浮力が大きいと波の様子をとらえやすくなり、安定感を得られます。パドリングに労力をつぎ込まない分、体力温存にもつながり、トロい波で長い時間ライディングができるというのもメリットでしょう。
ちなみにボードの浮力は、その人の体格、また初心者か上級者かという個人のレベルにも左右されます。あくまでも参考程度に知っておくとよいでしょう。
トロい波のテイクオフで意識すべきこと
ゆったり感が特徴的なトロい波でのテイクオフではどんなことを意識するとよいのでしょうか。ここでは押さえておきたいトロい波でのテイクオフのコツをご紹介します。
パドリングスピードを重視する
掘れた波ではパドリングを遅めにするのに対し、トロい波のときにはパドリングスピードを出し、思い切り加速させることが大切です。ここで加速しておかないとうまく波に乗ることができません。
パドリングスピードを上げることで、トロい波でのテイクオフの成功率アップにも期待できます。スピードを出しつつも、パドリングで体力を消耗しすぎないようなコントロールも重要です。
力まずリラックスした状態でパドリングできるよう練習してみてください。
パドリングはボードと体が平行になるよう意識する
経験が浅い場合、ノーズ部分が海に刺さってしまい転倒してしまうといったケースも少なくありません。このようなことを防ぐには、パドリングの際にボードと体が平行になるよう、いつも意識しておくことが大切です。ボードと体を平行にするのを基準として、波に合わせてバランスをとることが大事になります。
できるだけ波に対する抵抗を減らすことが大切で、例えば、ボードのテールが上がってしまいそうになったら、反対に後ろ荷重にして体をそらすようにすると上手くバランスが取れます。反対にノーズが上がってしまう場合には、体を前荷重にすると上手くバランスを取れるでしょう。
はじめからバランスコントロールがうまくできる人はいません。たくさんの波を経験しながら、コツをつかんでいきましょう。
パドリングで加速できたら前荷重を意識する
パドリングからテイクオフへ移行する際、いかにスピードに乗れているかが大切です。このときに後荷重になってしまうと、せっかく出したスピードが台無しになり、失速の原因になってしまいます。
失速してしまうと、波に乗り遅れテイクオフが失敗となることもあります。そのため、加速したら体は前荷重を意識することが大切です。
生み出したスピードはそのままに前荷重にすることで、更に加速しスムーズなテイクオフへと導くことがで出来るでしょう。両腕でしっかりとボードを押さえ、前荷重のまま立つことができれば問題ありません。
トロい波でのライディングは意外に簡単?
スローテンポなトロい波は、ゆったりとしており、パワーがそこまで強くないからこそ、波の特徴を知ってコツさえ掴めばライディングはそこまで難しくはありません。初心者や経験が浅い人でも挑戦しやすい波だと言えるでしょう。
漫然と続いていく波は、せっかくテイクオフを成功させても、そのままだと失速して波に置いて行かれることがあります。パドリングからテイクオフをし、生み出した速度をいかに維持出来るかが、ライディングのポイントです。
また、ダラダラと続く波を思い切り楽しむには、長く乗り続けるコツをマスターすることが重要です。長く乗り続けるために、トリミングとパンピングの技術について知っておきましょう。
ここでは、トリミングやパンピングの特徴やライディングのコツをご紹介します。
トリミング
トリミングとは、サーフボードを左右に振りながら斜め前に進んで行く技術です。スケートボードで左右交互に移動しながら進む動きを想像すると、イメージしやすいでしょう。
トリミングでは、前足を踏み込んだ反動でノーズを上げ、左右に振って行きます。ダラダラと続く波やスピードをキープする際や、掘れる波を待つ間などにおすすめの技術です。
パンピング
海でサーフィンをするプロの人が「パンパン!」と軽快に進んでいる人の姿を見かけたことはありませんか?この「パンパン!」という進み方は「パンピング」と呼ばれる技術です。トロい波のように、漫然ダラダラと続く波に長く乗り続ける時に習得しておくと大変便利です。
やり方としては後ろ足を使ってボードに反発力を生み出し、ノーズが角度をつけて上がった後に、今度はボードと水面が水平になるようにします。
ノーズが上がったらボードは平行にします。これを繰り返すことで、ボードの上下運動が生まれます。これがパンパンパン!と軽快な動きに見え、まるでカエルが跳ねているかのように見えるのです。
肩の力を抜いてリズミカルに乗りこなすことができれば、スローな波も思い切り楽しむことができるでしょう。
波に長く乗ることが出来てこそ、スキルも上達するものです。トリミングやパンピングのように「つなぎ」となるような乗り方を習得しておくと、次に来るかもしれない掘れた波にも乗るチャンスを作ることができるでしょう。
まとめ
サーフボードは、波の状況など海のコンディションや乗る人のスキルやレベル、経験値のほか、体格などあらゆることが影響するため、慎重に選ぶことが大切です。掘れた波でダイナミックにライディングをするのもよいですが、パンピングやトリミングなどトロい波を乗りこなす技術を習得すると、とても便利です。
波に合わせたボードへの体重のかけ方、テイクオフのタイミングの見極め方などは、経験を積めば積むほど、上達して行くでしょう。